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【書評】少年A(酒鬼薔薇聖斗)の手記「絶歌」を読んで

      2015/08/26

絶歌

1997年に神戸で発生したあまりにも残酷で猟奇的な事件。当時私は中学生で学校でも犯人像や事件について話しをしていたことを思い出します。

事件が発生してから1ヶ月後に犯人逮捕のニュースを目にした時、あまりの驚きで声が出ませんでした。

犯人が自分と同世代の人間の犯行だったからです。当時の私は世の中をなにも知らない純粋な少年でしたが、まさか自分と年がそう変わらない人間がこんなことをするなんて。

あれから18年たっても神戸の事件は自分の中で最も衝撃を受けた事件として心の中に刻まれています。

そんな中、あの少年Aが手記「絶歌」を出版するという報道を目にし、さらに遺族の方が反対している、多額の印税が少年Aの手元に入る、そして出版社への批判の声などが報じられていました。

私も遺族が反対している中での出版には反対で、少年Aの懐を増やすような助けはしたくないこと、また少年Aの一方的な内容である手記にはそもそもその内容に信ぴょう性がないのではと思い本を買うことは考えていなかったのですが、本屋でちょっと立ち読みしたところ思わず引き込まれ、買わずにはいられず購入しました。

そして、少年Aが3年間執筆に没頭したという彼の心の声を聴いたものの、結果として心の中に黒いモヤモヤが残り消化不要に。

本の内容をまとめると「精神異常をきたした自分の過去をまるで第三者からの視点で見るように、異常なまでの記憶力で冷静に分析し詩的に文章化したもの。」という印象を受けました。

本はだいぶ売れているようで、会社の同僚や友人に聞けば持っている人も多いかと思います。以下のレビューを読んでも、興味のある方は貸りて読むか、そのうち中古で大量に出回るでしょうから、そちらで購入するのをオススメします。

以下に本文の中から引っかかった部分を中心にレビューしたいと思います。

※「絶歌」出版に関して芸能界の反応をまとめた記事もご参照ください
元少年A手記「絶歌」出版に関しての芸能界での反応。松本人志「僕は読まない」
※本の要約はコチラ
元少年A(酒鬼薔薇聖斗)手記「絶歌」の内容と要約 〜10分でわかる〜


「絶歌」第一部

物心ついた頃から逮捕されるまで、布団の周囲を取り囲むようにぬいぐるみの山を築き、一日じゅう部屋のカーテンを締め切って眠っていた。

少年Aは子供の時からコミュニケーションが苦手で、自分の殻に閉じり、クラスの中でも、いてもいなくても変わらない存在だったとのこと。

なお、本を読む限り少年Aは問題のある家庭環境で育った訳ではなく、家族を大事にする両親と弟2人の5人家族で、どこにでもあるような家庭で育ったように見受けられます。

 

猫殺しが常習化した小学六年の頃には、母親の使っていたレディースカミソリで手指や太腿や下腹部の皮膚を切った。十二歳そこそこで、僕はもう手の施しようのない性倒錯者になった。

唯一心から慕っていた祖母が亡くなり、飼い犬が続けて亡くなると、彼の暗闇の部分が一気に解き放たれました。

身近な人の死は誰にとっても耐え難く悲しいものですが、彼の場合は悲しみではない違った特殊な何かだったようです。

少年Aの心の中に巣食っている暗闇は完全に彼の全てを蝕み、死を間近に感じないと性的に興奮しないほど精神的に異常をきたし、その結果犯行に及ぶことになりました。

 

今すぐに罪を認めたい。一刻も早く死刑台に連れていってすべてを終わらせてほしい。この頃の僕は、もう自分で自分をコントロールできなかった。

逮捕され、警察署で自分が行った犯行について白を通すか、全てをぶちまけるか葛藤し、最終的に自白へ。

鑑別所で精神鑑定などを受け、6年5ヶ月の間少年院で生活します。少年院では少年Aのために、精神科医や法務省教官など専門家で作るプロジェクトチームが編成されました。

なお、wikiによると少年Aは少年院時代、半裸状態で意味不明の奇声を発したり、職業訓練で使うカッターナイフを振り回したりと問題行動を起こしていますが、この少年院時代の6年5ヶ月の間のことは本ではすっぽり飛ばされています。

少年院時代のことを記載していないのは腑に落ちません。少年院時代のことを書く場合、更生を目的とした場所でも数々の奇行をしたことに触れざるを得ず、更生に失敗し、今でも社会の脅威だと思われてしまうことを恐れたのではと推測します。

「絶歌」第二部

「少年A」ではなく、誰でもないちっぽけなひとりの人間である自分が、実際ナンボのモンのなのかを知りたい。広い世界へ飛び出して、自分に何ができて何ができないのかを、自分の身体で確かめたい。

少年院を出所後、保護支援者や篤志家(とくしか)と呼ばれる更生支援者のYさん夫婦の助けを受け、徐々に社会に馴染もうとします。

そして、保護観察を終了し法的に拘束されていた立場から解放され、独り立ちを決意し旅立ちます。

 

自分は人間の皮を被って社会に紛れ込んだ人殺しのケダモノだ。いくら表面的に普通に暮らしても、他の人たちと同じ場所では生きられない。その変えようのない現実を強烈に意識し始め、僕はどんどんどんどん自分の中に追い詰められていった。

解体工事の現場や溶接工場で働くものの、自分の殻に閉じこもったままで、周りの人と普通の関係を築くことができず、苦悩している様子が伺えます。

とはいえ、事件の被害者ご本人、またご家族の方の苦しみはこの時の少年Aの苦悩とは比べることができないほど、大きく、深いもので同情の余地はありません。

 

僕は与えられた本を、一頁一頁、映画を撮るような感覚で映像を思い浮かべながら貪り読んだ。(中略)人生で最も暗く深い奈落で、僕は読書の快楽を覚えた。

少年院時代、そして社会に出て苦しんでいる時、現実逃避するため?か読書に没頭します。

本文では村上春樹や太宰治、三島由紀夫の書籍からの引用を使ったり、かなりの読書量と豊富な知識を伺うことができます。

おそらく出版社の編集も入っているとはいえ文章のレベルは素人とは思えません。これも膨大な読書量と本を読む時の特異な集中力からくるものと思われます。

そして、自分の事件についても本や新聞、雑誌で調べ、さらには他の凶悪な少年犯罪についても調べるようになります。

 

僕にとって書くことは、自分で自分の存在を確認し、自らの生を取り戻す作業だった。

仕事をしても過去から逃れることはできず、最終的に少年Aは書くことに居場所を求めます。求めるというより逃げたという表現の方が適しているかもしれません。

少年Aは食べること味も喜びも感じず、食べるのはカップラーメンと冷凍食品で水は1日3リットル以上飲むといいます。

また、時期によりペーパークラフトやコラージュという合成写真作りなどの何かに没頭しています。ルーティンや自分の中の決まりに固執し、何かに病的なまでの集中力を発揮し融通が利かない、これも一種の精神的な病なのかと感じました。

 

「絶歌」を読んでの感想

社会に出ても仕事も人間関係も上手くいかない、お金も減り、助けてくれる人もいない中で、少年Aは書くことに安息を見出します。

膨大な読書で培った豊富な語彙力と文章力で、最後の方になればなるほど、自分が有名作家にでもなったかのような、自己陶酔を感じられる内容に違和感を覚えました。

 

本を書けば、皆様をさらに傷つけ苦しめることになってしまう。それをわかっていながら、どうしても、どうしても書かずにいられませんでした。

最後の「被害者のご家族の皆様へ」という結びの項目で少年Aはこのように記しています。

被害者のご家族の方を苦しめることは分かっているけども、自分を救うために書くという、あまりにも身勝手で自己中心的な考え方です。自分自身のために書いたのです。

その他お詫びの言葉も述べていますが、体裁を整え、字を連ねただけで、ご家族の心には届くことはないでしょう。

結局、社会に出ていわゆる普通の仕事をして稼ぐことができなかったので、お金が必要となったのか、または世間から忘れられつつあり、名前を変え傍目は一般人として暮らしている状況に飽きて、姿、名前を見せずに注目されたかったのか。3時間かけて読んだこの本では本心を掴むことはできませんでした。

※「絶歌」出版に関して芸能界の反応をまとめた記事もご参照ください
元少年A手記「絶歌」出版に関しての芸能界での反応。松本人志「僕は読まない」
※本の要約はコチラ
元少年A(酒鬼薔薇聖斗)手記「絶歌」の内容と要約 〜10分でわかる〜

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